海と空と大地を感じ 自然とともに生きていく

『めいすい』に寄稿してくださっている気象予報士の森 朗(もり あきら)さんは、天気と水、天気と暮らしの関わりなど、予報だけではなく興味深い視点から天気について語るキャスターとしても人気です。趣味のマリンスポーツや、自然との向き合い方などについて、メイスイホールディングス代表取締役社長の永井秀樹がお話を聞きました。

森朗さん 気象予報士・ウェザーマップ代表取締役社長(写真右)と、永井秀樹 メイスイホールディングス代表取締役社長。

好きな海の天気を予測したくて気象予報士の資格を取得

  • 永井

    森さんが気象予報士になられたきっかけが、ご趣味のマリンスポーツだとお聞きしています。なかでも、ウインドサーフィンが好きになられたのはなぜですか?

  • 私は東京で生まれましたが、父の仕事の関係で小学3年から高校を卒業するまで、兵庫県西宮市で育ちました。高校は六甲山の麓の高台にあったので、教室の窓から神戸の港や海が一望のもとでした。席替えのときは窓際の席の人と替わってもらい、授業中も海を眺めていて、よく先生に叱られました(笑)。その頃から海が好きになりました。大学は東京の実家から通いましたが、まわりに海も山もなく、味気ない思いで過ごしていました。会社に勤め、独り立ちし、どこに住もうかと考えたとき、好きだった海のそばの神奈川県藤沢市の江の島の近くを選びました。知り合いに誘われてウインドサーフィンに挑戦したらハマってしまい、週末ごとに海へ出かけるようになりました。27~28歳の頃です。

  • 永井

    どんなところに惹かれたのですか?

  • ウインドサーフィンは、サーフボードのような板に帆を立て、風を受け、波に乗って水面を滑るように進むマリンスポーツです。自然のエネルギーだけを利用するのでエンジン音もなく、静かに滑る感じがたまらなく気持ちよくて、そこにハマりました。逆に風や波がなかったり、雨が降っていたりすると気持ちよく楽しめません。楽しめるかどうかは天候に大きく左右されるのです。

  • 永井

    そこで、天気のことをもっと知りたくなったわけですね?

  • そうです。海へ行く日の天気を自分で予測できるようになりたくて、天気の勉強をするようになりました。ちょうど気象予報士の国家資格ができた頃で、資格を取るための勉強をすれば天気に詳しくなれるだろうと軽い気持ちで学び始めたのです。ところが、始めてみると微分積分のような難しい数式を解いたり、気象業務法という法律を覚えたりと結構難しく、挫折しそうになりました。

  • 永井

    そうですね。私も文系ですが「水」のさまざまな側面を知るにつれて、数学的な要素がたくさん必要であることがわかり苦労しています(笑)。

  • それでも、文系の人間が理系の勉強をすると、一つわかったときの喜びが大きいですよね。なおかつ、学んだことを実際の自然現象として確認できたりもします。あの数式はこの現象を意味しているのかと、見上げた空に数式が浮かんだりして(笑)。

  • 永井

    空に数式――素敵なお話ですね。ただ、気象予報士の資格取得の難易度はかなり高くありませんか?

  • 合格率は5パーセント程度です。私は2回目で合格しました。

  • 永井

    合格したとしても、キャスターとして天気の情報を発信する場に立てる方はほんの一握りでしょう。森さんのように、天気の情報だけでなく、そこから広がる地球環境や水、私たちの暮らしや文化にまで言及されるキャスターは希少な存在だと思います。

  • 気象庁が発表した予報を伝えるだけではなく、天気と暮らしの関わりを掘り下げて伝えることで、多くの方に天気に関心を持ってもらえたらと、自分なりに工夫して伝えるようにしています。

ページトップ