旭岳(大雪山)

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めいすいの旅 プラス
東川町の暮らしを潤す雪解け水

東川町の中心部から30分ほど車を走らせ、旭岳の麓の森の中にある大雪旭岳源水公園を訪れた。小川に沿って整備された遊歩道を進むと、やがて山肌から染み出すように湧水があふれる源泉が姿を現す。生い茂る木々と苔むした岩場に囲まれ、水しぶきが舞うたびに森の空気がしっとりと潤っていくのが肌で感じられる。

絶え間なく湧き出る水をボトルに汲み、一口飲むと、澄んだ味に思わず声が出てしまう。雄大な姿で人々を見守る旭岳のような、おおらかでやさしさを感じる味。大雪山系の雪解け水は地中深くへと染み込み、何十年、何百年の時を経て東川町のすべての家庭の蛇口から流れ出るのだ。なんと豊かな山の恵みだろうか。

創業98年を迎えた、町自慢の豆腐店 宮崎豆腐店

豆乳とおからを使用したドーナツはやさしい味わい。

揚げ色が食欲をそそる厚揚げ(左)とがんもどき(右)。

「昔は、今のコンビニエンスストアのように豆腐屋がたくさんあったそうですよ。冷蔵庫が家庭に普及するまでは、毎朝必ず買うものだったんでしょうね」。今年、創業98年を迎える老舗『宮崎豆腐店』の4代目、宮崎伸二さんはそう語る。
時代は大きく変わったが、宮崎豆腐店には次々と客が訪れる。「硬めでしっかりしたお豆腐だから、煮くずれせず、味がおいしく染み込むんですよ」と教えてくれたのは、常連客で東川町内の学生寮で調理をする栄養士の女性だ。豆腐や厚揚げなど昔ながらの商品に加え、宮崎さんの代から始めた人気の豆乳ソフトクリームや豆乳とおからのドーナツを求めて、今日も多くの客がやって来る。

東川の町を象徴する居酒屋 りしり

中竹さんの友人が届けてくれたという、採れたての天然なめこ。

店主・中竹英仁さんの母が1997年に開業したのが『居酒屋りしり』。その始まりは、町の有志たちの「東川の誇りとなる居酒屋をつくりましょう」という声がきっかけだった。開業以来、りしりは東川町を代表する居酒屋として、地元の人だけでなく、四季を通じてこの町を訪れる旅行者が訪れる店へと成長してきた。
「新しいことをするというより、素材ありきで、一つひとつのクオリティを高めていくことで勝負しています」と語る中竹さん。徹底的に旬の素材の持ち味を生かした料理が人を呼ぶのはもちろんだが、町の社交場のような存在でもあるこの店には町内の人たちが集まり、町の未来について語り合う姿がよく見られる。味と空間、そのどちらにおいても東川という町を象徴するような店なのだ。

土地に根ざすことで生まれるプロダクト 東10号工房

「しっかりデザインされた工芸みたいなものづくりをしていきたいですね」と話すのは、木工家具の『東10号工房』を運営するインテリアデザイナーの清水徹さん。ともに工房を運営するスウェーデンの家具マイスターの資格を持つ遠藤 覚さんは「北海道内の木材の産地に近い点と、周りに木工工房が多く手助けをお願いしやすい環境だというのも、木工家具産業文化が発展している理由だと思います」と語る。これは遠藤さんが以前に工房を構えていた神奈川ではあり得なかったことだそうだ。「東川に来てから土地の人と町について話すことが多くなりました」と二人は口をそろえて言う。土地に根ざしてていねいにものづくりに向き合う二人が手がけるプロダクトは、やさしくも力強い存在感を放っていた。

写真●斉藤有美 文●渡邊卓郎

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