四季の自然を感じながら サイクリングを楽しもう

  • 永井

    夏なら汗をかいたことを実感しやすいのですが、冬は発汗してもすぐに蒸発するから気づきにくいのかもしれません。ミネラルが不足すると足がつったりもしかねませんから、こまめな休憩と水分補給を心がけたいですね。サイクリングで汗をかくことも体や健康にいいことだと思いますが、他によい点はどんなところでしょう。

  • 田代

    サイクリングは運動の中でも軽い部類に入ります。軽い運動だからこそ、今日いきなりでも25キロ以上を走れたのです。

  • 永井

    確かに。25キロの距離をランニングするとなると大変ですものね。

  • 田代

    たとえば、健康診断でメタボリックシンドロームと診断されると、医者から「適度な運動にはサイクリングなどがいいですよ」と言われることが多いようです。その理由は体への負担が少ないから。体重が重い人はウォーキングやジョギングをすると、膝をはじめ体に負担がかかってしまいます。けれども自転車は、サドルに座り、足で軽くペダルを漕ぐだけで前に進みます。最初にトライする運動としてうってつけです。

  • 永井

    今日は2時間ほどサイクリングを楽しみました。ウォーキングやジョギングを2時間続けるとなると、ちょっと厳しいですね。

  • 田代

    長い時間続けられるということは、長い時間、有酸素運動ができるということです。有酸素運動は低強度で長時間行うといいとされています。毛細血管を通して末端までの血液の循環がよくなります。また、軽いジョギングとサイクリングとでは同程度のカロリーを消費しますから、体重を落としたい人にもサイクリングは適しているといえます。

  • 永井

    なるほど。今日は田代さんに前を走ってもらって、「減速します」「止まります」「左に曲がります」「段差があります」といった声がけとハンドサインを頼りにして安全に走ることができました。走りながら次にどうすればいいかを伝えてくれるからとても走りやすかったです。

  • 田代

    ありがとうございます。サイクリングにはクルマと一緒に道を走るという緊張感があるものの、不安が薄れることで「また次も楽しみたい」となると考えています。

この日走った距離はおよそ25km。時折、休憩を挟みながら、自転車に装着しているボトルから水を飲む。

店舗の壁には、田代さんの選手時代の活躍ぶりを収めた写真が飾られている。

各地の自然に触れたり、
川の流れや水をたたえる姿に心が和んだり、
その土地の食事のおいしさに感激する、
そんな楽しみ方ができるようになりました。
――田代

境川沿いのサイクリングロード。後ろには境川に架かる水道橋が見える。

サイクリングのルートは川をポイントにして考える

  • 永井

    輝かしい選手生活を終え、有名自転車メーカーの社員として勤められたあと、神奈川県藤沢市でリンケージサイクリングを創業されました。なぜ、この地だったのですか?

  • 田代

    みなさんに楽しんでいただくには走るルートが重要になるからです。

  • 永井

    ルートを選ぶうえで大事なポイントはありますか?

  • 田代

    私がポイントにしているのは川です。川のそばにはサイクリングロードが敷かれていたり、抜け道のような細い道があったりします。そういう道はあまり自動車が通らないので比較的安全なのです。

  • 永井

    川沿いの道は、勾配も比較的安定していますよね。

  • 田代

    上流は勾配がきつくなりますが、下流は安定してきます。できるだけ勾配の緩やかな川沿いのサイクリングロードがあり、初心者も走りやすい環境で、自動車の往来も少なく、自然の景観が広がっている――さらに、海が近くにあり、山も遠くない場所を探して今の場所を選びました。

何事も川を起点に物事を考える癖がついています。
どの山系から水が流れ、水質がどう違うのか?
それは10代の自転車経験に由来するのかも。
――永井

境川の水が注ぐ湘南の海へ。雲の上に富士山の頂が顔を出した。自然を体全体で感じるのもサイクリングの楽しさだ。

  • 永井

    山、川、海――そう考えるとサイクリングは水の流れと同じですね。

  • 田代

    街、河川敷、田園、丘、山、そして海。太陽の光を浴び、風を感じながら、四季折々の景色を体感することができます。そんな達成感を得られるのが最大の魅力ですね。

  • 永井

    私もこの仕事を通して、何事も川を起点に物事を考える癖がついています。どの山系から水が流れ、水質がどう違うのか? それは10代の自転車経験に由来するのかも。「自転車は私の原点の一つなんだな」と今日、走りながら思ったりもしました。

  • 田代

    自転車がそういう形でお仕事に影響を与えることもあるのですね。

  • 永井

    みたいです(笑)。最近、プライベートでサイクリングされて印象深かった地域はありますか?

  • 田代

    仲間と一緒に四国を1周しました。新幹線で輪行(りんこう)*して。

  • 永井

    輪行、いいですね。子どもの頃、憧れました。初めて自転車を電車で運んで輪行したときは、自分も大人になった気がしてうれしかったです。

  • 田代

    広島の尾道からしまなみ海道を走って四国に入り、四万十川(しまんとがわ)などいくつかの川沿いを走ってきたことが印象に残っています。そろそろ新緑になろうかという景色がまぶしくて気持ちよかった。選手時代にはトレーニングコース周辺の自然を眺めるなんて余裕はまったくありませんでしたが、今は各地の自然に触れたり、川の流れや水をたたえる姿に心が和んだり、その土地の食事のおいしさに感激する、そんな楽しみ方ができるようになりました。

  • 永井

    レンタサイクルも充実してきていますから、現地で自転車を借りて走るのも手軽でいいですね。私もこれを機にもう一度、自転車を始めようかなと思います。今日はサイクリングもご一緒してくださり、ありがとうございました。

*自転車を専用の袋に入れ鉄道やバスなどの公共交通機関に載せて移動すること。

田代恭崇 TASHIRO Yasutaka

たしろ·やすたか●リンケージサイクリング代表。1974年東京都生まれ。日本サイクリングガイド協会理事。大学在学中に自転車競技を始め、卒業後にアマチュアのレースチームからブリヂストンサイクルのプロロードレースチームへ移籍。2001年、2004年と全日本自転車競技選手権大会優勝、2004年アテネ五輪ロードレース代表。引退後、ブリヂストンサイクル勤務などを経て現職。「これから自転車を始めたい」「自転車に興味がある」人に向けたサイクリングツアーを運営·企画しながら、専門的な知識と技術を身につけたサイクリングガイドの育成にも力を入れている。

写真●田中雅也 文●松井健太郎

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