四季の自然を感じながら サイクリングを楽しもう
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田代
練習もしましたが、運もありました。当時は就職氷河期で、思うような仕事に就くのが難しく、それならばいっそ自転車で食べていけないかと考えていました。自転車専門誌で、自転車競技選手の浅田 顕(あさだ あきら)さんがつくられた『リマサンズ厚木』という自転車チームの選手募集の記事を見つけ、応募したら受かりプロ選手への道が開けてきました。
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永井
開けてきたというより、運を自らの手、いや脚で、開いていったから今があるのでしょうね。フランスの自転車チームにも所属され、ヨーロッパ各地も転戦されました。自転車競技、とくにロードレースの魅力をどんなところに感じていましたか?
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田代
ロードレースは、1レースに200人ほどの選手が「よーいドン」で一斉にスタートします。優勝者はマラソンと同じく一人ですが、違うのは個人ではなくチームでエントリーしていることです。人数は大会によって1チーム5人から9人で、20チームほどで優勝を競います。もう一つ、マラソンと違うのはスピードです。マラソンは時速20キロくらいで、自転車は平均で時速40キロ。山の下りでは時速80キロを超えることもあります。スピードが速いと空気抵抗が大きくなりますので、いかに風の抵抗を抑えて走るかが勝ち負けの要因になります。永井さんは今日走って風を感じ、心地よかったと思いますが、レースになると風は敵です。
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永井
風を楽しむ余裕なんてない、と。
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田代
ありません(笑)。風の抵抗を抑えるためにどうするか。実はチームの中に「風よけ」の選手がいます。集団の先頭を走って「風よけ」となり、後続の選手が受ける風の抵抗を減らすのです。先頭の選手が「風よけ」として100の力で走っているとすると、後続の選手は30から60くらいの力で走れます。風から守られて体力を温存できたチームのエースの選手は、最後の勝負どころでスパートをかけて優勝をもぎ取ります。
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永井
永井 エースは他の選手にサポートされながら走るのですね。
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田代
そうです。ただ、出場選手が200人もいると選手間でさまざまな駆け引きが生まれます。たとえば、レースがスタートしてもすぐには誰もスピードを上げないということもあります。先頭を走ると空気抵抗があるのでみんな嫌がるのです。けれど、スローペースに耐えきれずに1人、2人、3人と選手が飛び出します。でも、それ以上は誰もついていきません。飛び出した3人はスピードを上げて離れていくものの、大多数の選手はまだゆっくりと走ります。なぜなら3人で走るより大人数で走るほうが風の影響を受けにくいからです。ただ、3人が抜け出した状態が長く続くとその3人が逃げて勝ってしまいますから、誰かが「風よけ」を引き受け、チームのエースを勝たせようとします。チーム同士で頭脳戦を繰り広げていくところがロードレースの一つの魅力です。
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永井
ロードレースはチームプレー、仕事と同じですね。今度観戦するときは、そんな駆け引きも楽しみながら見てみます

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永井
田代さんは世界各地の自転車レースに出場されてきました。水にまつわる思い出はありますか?
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田代
ご存じのとおり、ヨーロッパの水は硬度が高い硬水です。軟水で育った日本人の私の体には合いませんでした。フランスと日本の両チームに所属していたので、6年間ほどヨーロッパと日本を行き来していましたが、日本に帰ってくるたびに「水がおいしいなあ」と喜んで飲んでいました。比較すると、日本の水は少し甘く感じます。
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永井
カルシウム、マグネシウムなどの含有量の多い「硬水」は、少し苦く感じる方もいます。一方で日本の水は一般的に「軟水」で喉の通りがいいですね。そんなヨーロッパの硬水を、日常生活だけでなく自転車の練習中やレース中にも飲まれていたのですか?
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田代
水も飲みますが、おもにスポーツドリンク系の飲料を飲んでいました。汗と一緒に体内からミネラルが出てしまうため、それを補うことが重要なので。
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永井
レース中はどれくらいの量を飲んでいたのですか?
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田代
1レースで200キロ以上走る場合は、軽く6リットル以上は飲んでいました。自転車にボトルを備え付け、足りなくなるとサポートカーから受け取ったりしながら。
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永井
私たちがサイクリングを楽しむ場合も水分補給は大切ですよね。
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田代
もちろんです。私も水を常に携行しています。少し消耗が激しくなりそうならミネラルを多く含んだスポーツドリンクも準備します。今日の気温は5度から8度ほどと寒く、自転車を漕いでいる間は風を受けているので汗をかいた感じはしなかったと思いますが、汗は結構出ています。冬のサイクリングでも汗はかきますが喉の乾きを感じにくいため、意識的に水分を摂取するように気をつけたいです。
久々のサイクリングを楽しんだ永井。自転車経験と水について話す。